日本サッカーの日本化

世界と戦う日本人のためのフットボールを…!

海外で活動する指導者が、砕かれたハリルホジッチ・プランに思う

本日も皆様に読んで頂きたい1冊をご紹介させて頂きます。

 

W杯で日本が敗退した今こそ読んで頂きたい一冊です。

内容が非常に濃く、改めて日本サッカー界が進むべき道や、進んできた道に対して、

振り返る機会を与えてくれる内容になっています。

ハリルホジッチ氏の戦術・戦略や足跡以外にも、最新の理論である5レーン理論等も分かりやすく説明されており、

サッカーに詳しく無い方も、これ一冊で非常に勉強になるかと思います。

デュエルとはなんだったのか、というのも、報道等で聞くものとは大きく違っていたのだという事も、この本は伝えてくれています。

 

ここからはこの本を読んでの個人的な思いになりますが、

本当に残念だなと言う気持ちと、これからの日本サッカーに対する疑念や不安を感じ、

改めて、日本サッカー界を良くしていくために、草の根からでも出来る限りの努力をしなければならないと感じました。

 

まず、ハリルホジッチ氏に関して。

この本を通して、改めてエモーショナルで、まっすぐな方であったのだと感じました。

ハッキリとした物言いや風貌から、威圧的なモノを感じた方も居るかと思いますが、

実際のところは本当に誠実に日本サッカー界と向き合ってくれていたのだと感じます。

彼が要求していたものは、あくまでも、W杯基準のモノであったのだと、W杯が佳境を迎えた今、強く実感します。

戦術・戦略の観点から見ても、そのサッカーは非常に合理的であったと感じます。

メキシコ代表がドイツを破った試合の様な、的確な分析に基づく、相手の骨格を突く手腕は、実際に最終予選のオーストラリア戦や、アルジェリア代表を率いたW杯でも見せてくれていました。

ザック時代の代表は、ハマれば強いのイメージで、自分達の都合で試合を運べない際は非常に脆いチームであったと記憶していますが、

ハリルホジッチ氏が目指していたサッカーは、均一的なモノではなく、都度適した方法を選択していくというモノであり、今までの代表が取り組んできていなかったモノで、簡単にうまくいくモノではなかったかと思います。

その中でチーム作りをしながら、最初の目標であったW杯出場権を獲得し、本大会を見据えて準備をしていた中での解任は、やはりその行く末を見られなくなったという事実も重なり、非常に残念でなりません。

サッカー以外の部分でも、非常に心のある方で、熊本にも震災時にサポートをして下さり、現在もその関係は続いているとの事。

コミュニケーションに問題がある方が、本当にそんな事をするのかなと。何をもってのコミュニケーションなのかは協会の方の基準なのでなんとも言えませんが…

 

ハリルホジッチ氏が残してくれたモノに関して。

志半ばでの解任となった訳ですが、それでも多くのモノや気付きを日本サッカー界に残していってくれたと感じています。

デュエルもその一つですよね。

W杯前の合宿でのトレーニング中には、なるべくデュエルを避けようというコーチングがあったと、報道を耳にしましたが、

海外でプレーした経験が若干ある自分の経験を踏まえても、何を言っているんだという気持ちにならざるを得ない発言です。

多分、この方にはハリルホジッチ氏が伝えてきたデュエルが正しく解釈出来ていなかったんだろうなと。

1試合で200回程発生するデュエルを何を以って避けるのか。

避けるのではなく、そこで最低限戦う、負けないことによって、戦術や戦略は成り立つのでは無いのでしょうか?

骨格や筋肉量の違いは人種によってあるのかもしれませんが、そもそも世界レベルのスタンダードであると言われる、体脂肪率10%をクリアもしないで、どうやって戦うのかと。

何故それを何度も提言していたのかと。世界基準で戦う為に必要な事だったのではないか。

ましてやW杯では格上との対戦が多くなる日本であれば、尚の事その部分では同じレベルに達していないと、勝負にもならなかったのではないかと強く感じます。

格下である上に、条件や基準をクリアしていないのでは、当然敵いませんよね。

これを厳しい要求をする監督と捉えていた人達全員の責任ではないのかなと。

協会側はこの基準の重要さを理解し、サポートしていたのか。そこに対して十分なコミュニケーションはとっていたのか。

 

コミュニケーションというのもハリルホジッチ氏が残していったモノの一つかもしれません。

協会の言うコミュニケーションの問題はあまりにも抽象的過ぎて、結局のところ難癖つけたかっただけなのでは無いかと感じてしまいます。

勿論、言語の問題や、日本との文化の違いや、考え方や手法の違い等はあったのでしょうが、それは、外国人監督を呼んだ時点で想定出来たはずですし、過去にも呼んでいる訳ですから、理由にはならない気がします。

コミュニケーションの問題があったのでは無く、解任に向けてコミュニケーションに問題を発生させた。のではないかと。

仮に問題が選手とあったとして、その間に入るのが技術委員やスタッフだったのでは?

そもそも、選手が物申して、監督のクビが飛ぶというのが理解に苦しみます。

それがまかり通るなら、過去の実績等で物申す事が出来る選手が、実質チームを支配できる状況にあるわけで、チームとして正常な状態とは到底考えられません。

どの国のどんなチームにも、監督との相性なんかはあるでしょう。その付き合い方も含めてプロフェッショナルなのでは?

そうした部分からも、日本は世界に対して大きな遅れをとっている、そして今回の件で更に広がってしまったのでは無いかと感じます。

 

霜田元技術委員長の話も掲載されていますが、読めば読むほど、ハリルホジッチ氏の思いや願いが感じられ、一人のサッカー界で生きる末端の人間として、申し訳ない気持ちと、情けない気持ちが溢れてきました。

 

巻末のあとがきや、ハリルホジッチの遺産を読み終えた時には、大きな喪失感の様なモノを感じました。

そして、今回のW杯での戦いを、準備期間が少ない中で決勝トーナメントへ進み、ベルギーをあと一歩のところまで追い詰めた!

という美談で終わらせてはいけないと、改めて実感しました。

末端の一指導者が出来る事など、日本サッカー界の規模からすればなんとでも無いモノかもしれませんが、

こうした事や、未来の日本サッカー界に向けての課題を絶えず発信して、現場で改善に取り組み続ける事で、

未来の日本サッカー界に繋げていければと感じました。

そして、正しい意味で、日本のアイデンティティを生かした、

日本サッカーの日本化

に取り組んでいきたいと、改めて感じました。

 

一人でも多くの方がこの本を手に取って、

日本サッカー界を正しい目で検証してくれることを願います。